よく移籍や進学・進級にあたって「よりレベルの高い環境で…」という方がおられるかと思います。
しかし本当に『レベルの高い環境』が子供を成長させてくれるのでしょうか?
そこを選ぶに当たって見落としていることなどないのでしょうか?
この記事では『レベルの高い環境』がなにをもたらしてくれるのかを整理して、ステップアップを考えている方に今一度目的と手段が一致しているかを確認して頂けたらと思います。
「上手くいかないこともあるかもしれないけれど、子供同士が切磋琢磨することで必ず成長するはずだ!」
と安易に考えてしまっている方はぜひとも読んでみてください。
『切磋琢磨』ではなく『真似』と『自信』

よく環境を変えたがる方がメリットとしてあげるのが「よりレベルの高い仲間と切磋琢磨できる」という部分です。
しかし実際には切磋琢磨なんて起こらないのが私としての雑感です。
そんなことよりも
「チーム・監督が自分を高く評価していて試合において必要とされている」
または「自分のプレーや振る舞いがチームの勝敗に大きく影響する」
といった安心感や自信のほうが選手を成長させてくれます。
最近ビジネスマンの中でも『心理的安全性』なんて言いますよね。
人は「少しくらい失敗しても自分には受け入れてもらえる居場所・価値がある」と思えないと何かに挑戦することは難しいと言われます。
これがチームに同じポジション、同じ特徴、同じ年齢の選手がいたらどうでしょう。
焦りは生まれますが、子供が多くを得るためにはストレスが多すぎるのが現実です。
『レベルの高い環境』で得られるもの
しかしかと言って、『レベルの高い環境』で何も得られないわけではありません。
「環境を変えたい」という方はここを十分に理解しておく必要があります。
よりレベルの高い仲間がいることで最も得られるものは『モチベーション』です。
単純に『モチベーション』と聞くと、「そんなこと⁉」と思うかもしれませんが、ここで言うモチベーションとは「自分もできるはず」という言わば自信のようなものです。
人は自分と近い境遇の人がしていることを「できるかも」と思う性質があります。
これを「代理的経験」と呼び、自信を高める1つの要因になります。
また子供は何かを真似して覚えることが得意なので、近くのチームメートができることに対して「やってみよう」→「できた!」となる可能性も高まります。
これが「レベルの高い環境」で得られる最も大きなものになります。
レベルは上がるが超えられない
ここで判明してしまうのは周りのレベルに引き上げられる可能性があるものの、その『レベルの高いチームメイト』を超えられる可能性はあまりないということです。
あくまで真似をする対象であるチームメイトはまたよりレベルの高い環境でレベルの高い技術や考えを得てきます。
それを追いかける立場が変わることは考えにくく、強いチームにいる選手の1人となってしまうでしょう。
もちろんそれでも構わない方はそれでも良いです。
また、もしフィジカル的に優位性があるのであれば、技術やサッカー観を身につけることで飛び抜けることはありえます。
このなんとも微妙なメリットと「試合に出られないかもしれない」「評価されないかもしれない」などのデメリットは必ず天秤にかけるべきでしょう。
切磋琢磨するライバルは対戦チームに求める

しっかりと休養の確保されているリーグ戦などにおいては、選手のローテーションはそこまで多くなりません。
そのような状況で同じチーム内に同じポジション、同じ学年、同じ特徴の選手がいたらどうでしょう。
確実にどちらかの出場時間は削られ、よくて五分五分です。
結果の残せなかったほうが挫折を味わい、結果を残した片方の選手も常に背後から刺されるような意識の中でプレーすることでしょう。
セレッソ大阪が挑む育成構想から学ぶ
このような考えのもと選手を”取りすぎない”試みをしているのがセレッソ大阪の育成組織です。
技術委員長に風間八宏氏が就任していこう地域を巻き込んだ育成改革を実施しており、育成年代での結果も出し始めています。
風間さんはアニメ「キャプテン翼」を例に上げ、スタープレーヤーは色々なチームから出てくると話し、セレッソが各ジュニアユースのエース級を集めることをやめさせました。
そのセレッソが取らなかった選手も各チームの指導者がセレッソを中心に連携を取ることで、成長を見守ることが出来ます。
ここから数年後のセレッソに地元出身の選手が溢れ、結果を出し、海外への移籍などで移籍金などを得ることができれば育成型のビッククラブに成長することは間違いないでしょう。
チーム内競争で生まれる”焦り”は持続性のないパワー

過去の青春ドラマの影響か「チームメイトと時に争い、時に手を取り合い…」のような少年たちの姿を素晴らしいと思ってしまいます。
しかし実際のチーム内で生まれる競争の中では、そのような爽やかな状況は生まれません。
競争で生まれるモチベーションというのは『外的要因』によるものです。
つまり、他者からのプレッシャーという自分と関係のないとこからのエネルギーによって「よし!やろう!」となっているに過ぎないのです。
これを別の言い方で「外発的動機づけ」と言います。
このモチベーションは一瞬のパワーはありますが、持続力を欠きます。
そのためこの先長い闘いが待っている育成年代の選手が用いるには不適切でしょう。
日本をベスト16に導いた『ブラックパワー』
元日本代表監督である岡田武史氏はカタールワールドカップの開催以前に、日本が自国開催以外でベスト16に進出できた理由を『ブラックパワー』のおかげだと言っています。
ここで言う『ブラックパワー』とは、本大会を前にチームの調子が上がらない中、火事場のクソ力的に選手たちが主体的に動き出すときの「負のエネルギー」のようなものです。
しかし岡田さんはこの力も「持続力に欠ける」と言われています。
これこそまさに外発的動機づけの限界なのでしょう。
「負けず嫌い」ではなく「勝つことが好き」な選手を
そしてその根源的な考えとして、日本人の「負けず嫌い」を素晴らしいとする価値観に言及しています。
なぜか日本全体に浸透している「一流選手は負けず嫌い」という考え方。
しかし海外の選手は違うと言います。
プロテニスプレーヤーのフェデラー選手の言葉を引用し、彼らは「勝つことが好き」なのだと訴えていました。
「負けたくない!」という感情は文字通り『負のエネルギー』。
嫌なことを回避するためのモチベーションです。
しかし「勝ちたい!」というのが一番にあれば、回避的な思考にならずに済みます。
『負け』がつきものの勝負の世界で常に自分の内から湧き出る感情で行動でき、自分のできることにフォーカスできることがどれほどまでに子どもたちを幸せにするか想像できるでしょうか。
必ずそれを見守る親御さんたちも笑顔になるはずです。
まとめ

もしも現在所属しているクラブの同級生と3年後どちらが上手いかを競争したいだけであれば、強豪と呼ばれるチームに行くほうが勝つ可能性が高いでしょう。
しかしその年代でのサッカーを楽しみ、子供の可能性を十分に発揮して長く闘わせて上げたいのであればしっかり今後を考えなければなりません。
「レベルの高い環境」が本当に今の我が子に必要なのか、今一度よくよく考えてみてください。
”ベンチでチームの勝利を喜ぶ子供”
”チームの主軸として悔し涙を流す子供”
結構な究極の選択ですが、この2つの未来を想像してみるのもありでしょう。
もちろんその後のことも一緒に…です。
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