よく高校サッカーは『敬語』で、クラブチームのユースは『タメ口』なんて言われます。
現在ではこの辺の上下関係も昔と比べて緩くなってきており、とても良い傾向に思います。
今回はサッカー全体を考える上でこの上下関係というのがかなりの害悪なのではないか、というお話。
より多くのタレントを生み出すためにはこの辺の文化自体を問題視するべきではないかと考えます。
今まで当たり前だったことも世の移り変わりとともに変わっていくものです。
新しい時代の子供との接し方について考えていきましょう。
そもそもなぜ目上の人を敬うのか
日本の目上の人を敬う文化のルーツは「儒教」という宗教上の考えから来ているようです。
確かに「人生の先輩」である年配者は知識の量も豊富で役に立つ知恵も備わっているでしょう。
しかし現代では必ずしもそうとは限りません。
そして私個人としてはこのように敬語を駆使しながらも、上下関係は廃止すべきだと思っています。
現代はその過渡期にあるのではないでしょうか。
昔と今の違い
昔は現代ほど多くの人と関わることはありませんでした。
50〜150人程度の村社会で暮らしていたと言われています。
つい最近(50〜100年前)までも似たようなものでしょう。
しかし移動手段や通信ツールの発達によって人生における関わる人の数が格段に多くなってきたのがここ数十年の現代です。
これにより変わったのはどういったことでしょうか。
まず、情報を色々なところから引っぱって来れるようになりました。
これまでは近くにいる人の中で最も詳しい人に聞くしかなかったことが海や言語を隔てて調べることができるようになったのです。
また、人生観も大きく変わってきています。
おおよそ属するコミュニティの固定されている時代では、その集落の人間は同じような人生を歩むことが多くなります。
仕事も情報も限られていますから、その中で興味を持ち自己研鑽し自身のアイデンティティとしていくのです。
このような社会ではそれこそ目上の人は『敬うべき先人』になります。
今後歩むであろう道の先を知る人から学ぶことはRPGゲームの攻略本を手に入れるようなものです。
しかし現代では同じ土地に生まれてもその後の人生は多種多様です。
別の土地に移り、全く触れてこなかったジャンルの仕事につくことだってよくある話でしょう。
ネットで触れる情報の中に自分の夢を見つけ出し、その先生となる人物が年下なんてこともあるはずです。
サッカーにおける弊害
この流れで行くと、サッカーという道の上で先を行く『先輩』に敬語を使い敬うことは必要なことに思えてきます、しかしことサッカーにおいてはこれとは別の弊害が存在するのです。
自信が持てない
自信というのは文字通り「自分を信じること」です。
しかし常に年配者が「答え」を持ち指示・指導される世界ではどうでしょう?
「未熟な自分は何かを間違っているのではないか」
「自分には何かが足りていないのではないか」
といったような自分を信じきれない人が多数を占めるはずです。
もちろん環境要因で信じきれる人もいますし、元々の性格で外野の声を気にしないような人もいるでしょう。
しかしこれは特異なパターンです。
この特異なパターンこそが日本のスポーツ界で記録を塗り替えてきたのでしょう。
また例にあげた「何かが足りていない」のような『不足』を感じるマインドセットでは何かを得ても学んでも自信のつかない、最も良くない考えに繋がってしまいがちです。
失敗を許容できない
上下関係が強い状態というのは先程のような「先人が答えを持っている」状態です。
これも内面的な話ですが、この状態で失敗する人間というのは「先人に教えを請うていない人」か「教えを実行していない人」となります。
つまり「成功のためには失敗はつきもの」とか「失敗するのはまだ経験が足りていないだけ」といったポジティブな考えには至らないのです。
キリスト教の根強い欧米の考え方は「神のもとでは皆平等」であり上下の考え方ではありません。
そのため失敗などに対しても受け取り方が違うのでしょう。
若くして成功できないのは「上下関係」が原因か
上記2つの延長線として最も大きな問題がこれです。
昨今のサッカー界では多くの10代選手が活躍しており、継続的に若手選手が出てくることで国の強さも成長していきます。
しかし日本のサッカー界はどうでしょう?
J1で10代のスタープレーヤーなんていませんし、日本代表でも若くて20代前半です。
育成でのレベルの差も無きにしも有らずですが、それ以上に若い選手が力を発揮できる環境に内容に感じます。
もちろん有望な若手が海外に引き抜かれていく現状もありますが、まだまだ若手有望株はたくさんいます。
そして実力もあります。
ただここまで出てこないとなると日本の風土が邪魔をしているのではないでしょうか。
もっと自信を持ってプレーし、失敗も厭わない。
そんな10代若手選手がたくさん出てこないと日本に未来はありません。
大事なのは「子供扱いしないこと」
冒頭でも書いた通り、子供の中での上下関係は少しずつ無くなってきているように見えます。
また子供は大人を見てそうなっているだけなので、やはり問題は大人の方にあるでしょう。
この時代にそぐわない上下関係をやめるためには大人が子供を「子供扱いしないこと」が大切になってきます。
もちろん躾の意味などで大人としての責任を果たすことは重要ですが、それ以外において大人が頭ごなしに指示・指導することをやめていかなければなりません。
たとえ年下でも仕事の部下に子供扱いはしませんよね?
もししているのであればその部下は育っていないはずです。
同じ目線で話し、意見を尊重する。
また若さゆえの過ちや偏見、過度な自信などについても許容しその上で関わるのです。
一方的に「変えよう」なんて考えてはいけません。
別人格の人間を変えたり動かしたり、コントロールすることはできないからです。
その人の考える一つの意見だと受け止めるくらいがちょうどよいでしょう。
そのようにすればふとした時に何かに気づき、その人なりの成長が見られるはずです。
ただし意見を聞きすぎてしまうのも「子供扱い」になりますので注意が必要です。
大人同士が意見をぶつけ合うようにこちらの意見を伝えると良いでしょう。
懐の深さが大切です。
そのようにして育った子はまた自信が大人になったときに同じように接していけるはずです。
まとめ
おそらくですが日本の根強い文化である上下関係がなくなるのには長い時間が必要になります。
しかしそう遠くない未来、上下関係は不要なものとして若者の間で扱われるはずです。
その時にそれを許容できる大人になって、より良い日本社会、ひいてはサッカー界をともに築いていきましょう。
サッカー界がその先駆けとなることを祈っています。

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