技術・考え方

【システム・監督論】複雑になるサッカーを考え直す

昨今では情報発信が容易になったことで、戦術や采配、選手起用に対して意見を発信するインフルエンサーが増えています。

その中でシステム論や選手の立ち位置などを事細かに伝えており、サッカーの見方が大きく変わった人も多いのではないかと思います。

ただその反面、その話にいまいちついて行けず「そんなことまで考えるの?」「サッカーってなんか難しい…」なんて感じる人も多いはずです。

しかし「システム」にしろ「監督」にしろそもそもを考えてしまえば何も難しいことではありません。

議論が白熱し、話をまとめると、とても根本的な結論にたどり着く…、なんて話はよくあるものです。

ぜひ情報の渦に飲み込まれず本質を捉えて見ていきましょう!

システム論のそもそも

よく「システム」や「フォーメーション」という数字の並びを見ますが、あれは選手の配置を後ろから呼んだ数字になります。

ディフェンス4人、中盤(ミッドフィルダー)4人、フォワード2人なら「4−4−2」と言った形です。

多くはキックオフ時の配置だったり、守備時の配置だったりします。

それではなぜこのように選手の配置を決めるのでしょうか。

それはコートが広く、ボールが速いからです。

サッカーコートは基本105m×68mの長方形の形をしています。

右の端の方でプレーしていた人が反対のサイドまで50m移動するには早くても6秒程度はいるでしょう。

しかしサッカーでの6秒というのは下手すると奪ったところから点が決まってしまう時間です。

そこでそのような早い展開にチーム全体で反応できるように考えたのがシステムやフォーメーションと言われるものなのです。

ゴールから逆算して持ち場をある程度決めることで右サイドの人が左サイドまで走る回数は限りなく少なくなるはずです。

システムは崩れることもしばしば

システムの数字を「キックオフ時、もしくは守備時の配置」と表したのには理由があります。

それは試合中にはその数字が、上空から見てもわからないくらい崩れるからです。

これは意外とサッカー未経験の方のほうが分かる感覚かもしれません。

いくらチームで「こう戦うぞ!」と決めていたとしても、それをさせない相手がいます。

またミスも起こります。

そして時間が経つにつれ、選手は疲弊します。

このような変数が複数存在するゲームで「こう来たらこう」は準備しきれないのです。

味方がかわされたらカバーに行きますし、そうなれば多くの場合で”カバーのカバー”も必要になるでしょう。

相手のシステムとミスマッチを起こしていたら、誰かが助けに行かなければなりません。

「頭でっかち」にならないように注意が必要

前述したように「システム論」はある時点での形であるというだけなのですが、にも関わらず昨今ではそれが大変重要視されてます。

サッカーが大好きな子供の中にはこの潮流に合わせてそれらの知識を持っている子もいることでしょう。

しかし監督であれ選手であれ、あまりにも「システム論」を考えすぎることはおすすめしません。

システムを考えすぎる子供はたいていコート内での動きが『パターン化』してしまいます。

例えば流れの中でボールを奪いに行ったほうが良い局面でも、立ち位置を守るために奪いに行かない、あるいは奪いに行く判断が遅れるのです。

理性的な動きはあくまで衝動的な動きのあとに考えるべきです。

幼い頃から理性的にプレーさせることは選手の感情をプレーに反映させにくくさせます

試合を決めるゴール前の攻防ではこのような判断が運命を分けますので、そのような選手は決定的な仕事ができない選手ということになってしまうでしょう。

予定調和を壊す「今だ!」というプレー

欧州や南米と言ったサッカー大国と日本サッカーの差は年々縮まっています。

数十人のトップレベルの選手は遜色なく闘えるレベルにあるのは確かでしょう。

しかしサッカー大国と言われる国の選手たちは100人以上の単位で欧州のトップリーグを活躍の場としています。

これもまた大きな差です。

トップレベルで差が縮まっている要素といえば技術や考え方、フィジカルなどでしょうか。

近年の代表戦を見比べても以前ほどの差は感じなくなりました。

それとは別に全くもって差が縮まらない要素もあります。

それが前述した『感情的なプレー・判断』です。

日本サッカーの一番の課題と言って良いかもしれません。

理性的にプレーする時間が長すぎるが故に「今だ!」というプレーが少ないのです。

これが『パターン化』してしまうということです。

「今だ!」というプレーがないとサッカーは予定調和になります。

強い敵からすると、これほどまでに往なしやすいサッカーはないでしょう。

監督のそもそも

みなさん監督という役職にどのようなイメージがあるでしょうか。

なんとなく試合のすべてを司っているようなイメージがありますよね。

しかし実際には試合中に監督ができることなんて限られています。

将棋のようにあらゆる前提が揃っていて、攻撃の順番があれば良いのですがサッカーではそうもいきません。

各チームで選手の特徴も全く違いますし、攻撃の回数すら限定的です。

そのなかでできることと言えば、

  1. 攻守においてチームの共有事項を作る・伝える
  2. 責任の所在を明らかにする
  3. 相手の隙や狙いを探り、都度修正する
  4. 選手の感情面に配慮し、最高のパフォーマンスを引き出す

①攻守においてチームの共有事項を作る・伝える

①はチームとしてのクオリティをあげる作業です。

どうせチームとして活動するなら質高くしたいですよね。

ゴールを狙う際の攻撃では数本のパスを繋ぐ必要があり、

シンプルに裏に抜けるのであれば、最低で1本。

サイドからのクロスであれば、最低2本。

ワンツーでも2本。

そして、これらのフィニッシュに繋がる状況を作り出すためには更にパス本数は増えるはずです。

その複数本のパスというのが意外と試合では綺麗に繋がらず、ここではお互いの共通認識を必要とするのです。

それこそ「阿吽の呼吸」です。

また守備も同様で、守備では隙をなくし、迷いをなくし、狙いを共有します。

相手がゴールに近づけないように隙のない守備陣形(ブロック)を形成し、そこから優先順位を示し判断の軸を作り、更にこちらから奪いに行くときの「狙い・奪いどころ」を共有するのです。

このようにすることで相手はまともにはゴールに近づけないはずです。

究極を言えばゴール前に11人密集すればなかなかゴールなんて取れたものではありません。

そしてこれらは監督の仕事としては日頃の練習や試合での積み重ねによるもので一朝一夕で手に入るものではありません。

②責任の所在を明らかにする

これは「裁判官のように振る舞うべし!」と言ったものではありません。

選手がプレーしやすいように「要所・要点」を明らかにするのです。

例えば「1対1のカバーはいらない。やられたやつが悪い」や、

「ディフェンスラインはもっと高くしよう。そこから裏を取られたら蹴らせた前線の責任だ」

のように何が選手に要求されるのかを責任とともに示すのです。

前者であればそれぞれが1対1で負けないことに集中しますし、それができない選手であれば1対1にしない方法を考えるかもしれません。

後者はディフェンスラインを上げやすくなる反面、もし相手FWの足元に入るパスなどあれば激しく奪いに行かなければならなくなるでしょう。

これに関しては細かい部分を試合中に示すかもしれませんが基本的にはその積み重ねと、それまでの指導によるものでしょう。

③相手の隙や狙いを探り、都度修正する

これが皆さんがイメージする監督の一番の仕事だと思います。

しかし試合中にはそこまで影響できないのが実状です。

まず試合中に起きた現象に対しては

再現性があるのか(何度も狙われるもしくは狙えるか)、

ピッチ内での修正はできているか、

シンプルな解決策はあるか、

を考えるでしょう。

例えば守備で何度も狙われないのであれば、それは誰かの油断やあってはならないミスによるもので、ベンチサイドから変える必要がないことになります。

何かしらの変更をするのであればその都度僅かな隙が生まれますし、そもそも完璧に伝わるとも限りません。

できれば迷いを生じさせないように手を加えずにいきたいものです。

またこちらの意図を組んでピッチ内で修正できている場合も指示はいりません。

長年ともに闘っている中心選手などが気づくこともあります。

そしてなにか指示を出すにしてもそれはシンプルなものでなければなりません。

複雑な指示や大きな変更はピッチ内での不和の原因になります。

これらを考えると、主な仕事は試合前やハーフタイムであり、試合中は微調整程度となるでしょう。

そもそも大歓声のプロの試合では選手に伝えるのも一苦労です。

④選手の感情面に配慮し、最高のパフォーマンスを引き出す

最後はメンタルです。

トッププレーヤーであろうとメンタル面に不調があればチームに貢献できません。

不調に苦しむ一流選手が監督からの信頼を継続的に受けて復活するなんてこともよくある話です。

誰がなんと言おうと信頼する選手であれば使い続ける必要があります。

「素晴らしい!」と伝えながら試合で使わないなんて言葉の重みがなくなりますからね。

そしてこれを必要とする各選手に行わなければなりません。

少なくても15〜20人程度でしょうか。

これに関しても試合中にどうこうできるものではありません。

信頼は一朝一夕では作れませんからね。

監督は最高責任者であり、サッカーを一緒に考える1人

ここまで見てきた通り試合は監督の作品ではありません。

対策を考える上でも別視点をもった12人中1番目のアイディアマンといった役割なのです。

もちろんあらゆる決定権は監督にありますので、それに伴った責任も生じます。

ですが同じ「勝利」という目標に向かう上で監督が試合中にこねくり回すことはできず、微調整を行いながらハーフタイムで修正を加え、更に様々な要因との兼ね合いの中で選手起用を考えていくというだけなのです。

これも人間が集団で動き回るスポーツである以上、これが限界なのでしょう。

ほとんどの仕事は日常的な積み重ねです。

まとめ

よく「あの監督は何も考えていない」などといったことをシステム論と絡めて語られていますが、監督の仕事は試合前までの部分が非常に大きく、それも長い積み重ねを必要とします。

そのため就任早々で結果を出すには、適切な起用と高いモチベーションのみがこだわれるポイントで、あとは運次第といった感じでしょう。

もちろんチームの最大値を出すためにも多くの経験と知識が必要ですが、それも結果論で何が良かったのかは誰にもわかりません。

またシステムにおいても数字だけで語るのはナンセンスですし、すぐに変更できるものでもありません。

サッカーを楽しむのは良いことですがあまり頭でっかちになりすぎないように、『人それぞれのサッカー観』を認め、その上で楽しめると良いかと思います。

自分の好きなサッカーに出会えるように様々な考えを受け入れていきましょう!

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